魅せるデザインについて学ぶ(その1)

最近、ウジトモコさんの売れるデザインのしくみ -トーン・アンド・マナーで魅せるブランドデザイン-を読みながら勉強になったことを引用を交えつつ、備忘録として、そして自分への戒めとして少しずつ書いていこうと。

今までの「デザイン」に対する意識

 今あるパンフレットや既存の会社案内の大元はどこにあるだろうか。もちろん改訂は行われてきてはいるだろうが、中身は実は創業時から・・・なんてことも少なくないのかもしれない。いつの頃からか時代はIT時代と呼ばれ、ITへの設備投資に各企業は躍起になってきた。が、デザインについてはどうだろうか。「何か、古いよね」とか思いつつも心の底から売り上げに直結するとは思えず、ずるずると「センスないよなぁ」なんて言いながらも眺めている人が多いのではないだろうか。それについて企業には色々な理由があるだろうがひとつは「意識」によるところが大きい。つまり、「ITへの設備投資」と「デザインへの投資」なら前者をとるに決まっている、という意識である。確かに近年、ITへの設備投資なしには成長が難しいことも厳然とした事実であり、企業はこぞってそこに投資せざるを得なかった。デザインにそんなに多大なコストをかける意識は乏しかった、というのは仕方のないことかもしれない、今までは。

デザインにかけるお金も時間もない?

 デザインにかけるコストをどのくらい意識しているか。例えばソフトウェア開発なら画面のデザインへの意識は「ソフトウェア本体」に対してどの程度を占めるだろう。まぁデザインも本体の一部、と言う意識を持っているのでもちろん考えないことはないが、○○という理由から何色を基調とし、コンテンツを配置やアイコン、全体のイメージなど、「目的を達成するためのデザイン」という意味でどれだけ真剣に考えられているか、というと少なくとも私は考えられていない。なんとなく「これでどうだろう」というドラフトデザインをステークホルダの誰かが「いいんじゃない?」と言えばそれに決まったりする。
 先のパンフにしても、長いこと売っている商品のパンフだったりすると、時代の変化とは切り離されたように「改訂」されたものが細々と生きていたりする。最近でこそ、マーケティングという言葉が声高に叫ばれている影響か、デザインコストをゼロと考える人はいないだろうが、その重要性からすればまだまだ見合わないコスト意識であるに違いない。理由はどうあれ、兎にも角にも「デザイン」にかけるコスト(お金と時間)が確保できていない現状に他ならない訳だが、こうした現状は何を引き起こしているのか。皮肉にも、売るためにコストを削減したのに、削減したコストによって、日々「お金」や「名声」、「人気」を失っている状態を作りだしている状況に他ならない。

消費者としては気付いている

 実はデザインの重要性には潜在的には多くの人が気づいているはずだ。Appleのデザインの素晴らしさに魅せられることを感じているから。でもそれは「消費者として」である。実際、提供側にまわった時にはアップルのことはまるで違う畑のように見ていないだろうか。アップルと自社は違うなんてことはないはずだ。少なくとも消費者としては。

マーケティングとデザインの関係

 マーケティングとデザインは密接な関係に置いておく必要がある。なぜなら「なぜこのデザインなのか」には意味があり、目的に向かわせるものだからだ。マーケティングも売れる仕組みを作る、顧客視点で言うと効果的に商品やサービスが得られるようにするものである。そのために、ターゲットを考え抜いたり、ポジショニング戦略をとったりとても苦労しているわけだ。でも考えてみればすぐに分かるが、顧客に手にとってもらうのは視覚が重要なのは当たり前だ。ならば、デザインというものはマーケティングの定義にぴったりと当てはまることに誰もが気付くだろう。局所的に定義するならば、いわゆるデザインマーケティングである。マーケティングという活動の一部と考える方が個人的にはしっくりと馴染む。

視覚をどう使うか

 商品やサービスの良さをどう魅せたらよいか。ここは本文から引用させて頂きたい。

 セールスプロモーションに熱中するあまり違う業種、どちらかというとセールスがきつい業種に間違われて
しまったり、高品質な商品なのに成分の劣る類似品と同じに見えてしまったりするのです。
 このようなケースの場合、品質のよさが伝わらない限り、購買への意欲も商品への信頼も感情的な欲求も起
きません。では、どうやったら視覚を積極的に使い、高スペックな商品に見せることができるのでしょうか。
基本はこの三つです。

1.他に(すでに)流通しているものと形状を変える
2.異ジャンルの高品質のものと同じトンマナを付ける
3.デザインの品質(クラス)そのものを上げる

 こうした要素が、一つあるいは二つ以上クリアできていれば、成分のよさや品質の高さは充分なアピールに
なり、しかも受け取る側は別の認識、「期待できる気がする」「他のものとは違う」「私の好みである」など
と受け取ってくれるため、積極的な売り文句とは異なる認識と捉えてくれるのです。

どうだろうか、マーケティングをかじっている人なら否応なく、差別化のインタフェースとしてデザインが機能していることが分かるはずだ。




売れるデザインのしくみ -トーン・アンド・マナーで魅せるブランドデザイン-

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