先行投資ではない人材育成!? 〜韓国Samsungに見る価値の相互提供
今日はSamsungの人材戦略から。
Samsung、言わずと知れた
韓国の最大手の電子製品、総合家電・電子部品メーカーで
す。
以前、ちょっと話題になっていた記事に
日経エレクトロニクスでのSamsungでの人材戦略がありました。
ス
ペシャリストの育成はともかく、
もっとも興味を引いたのは、
「地域専門家」
というものです。
海
外の法人を担う人材を育てるための制度だそうで、
3ヶ月、合宿形式で語学の研修を受けた後、
特定の地域へ1年間派遣されるそうです。
そ
こでやることと言えば、
ノートPCとデジタルカメラで
日々の生活をレポートし続けること、
そして、1年間その任
務を終えて
帰ってきたらば報告書を作成する、
以上、だそうです。
いいなぁ、と思うかもしれませんが、
結
構大変だと思います。
ここには人材の育成という観点と
企業としての利益という両面からよいことがあります。
前者
はもちろん、
語学を学べること、
海外でグローバルな視点を磨けること、
世界的な人脈を築けること、
などなど色々とあると
思います。
では、後者の企業側の利点は何か、
それはもちろん人材が育てば企業にとってはよいことです。
それだけ
ではありません。
この制度は年間200〜300人が利用しているとのことですが、
そうすると、
毎日200〜300のレポートが世
界各国からあがってくる。
それは企業にとっては
その国を知るための貴重な(マーケティング的な)資料になります。
ま
た、個人的な人脈は
会社としてのつながりを生みます。
年間で新たに形成される人脈は
計り知れないものがあるでしょう。
結
構大きな投資のように思います。
人材育成というのは
よく先行投資ということが言われます。
人は急には育たないか
ら
リターンを目論んで、
まずは先行して投資するしかない、という考えです。
ところがこのSamsungのやり方はそうで
はありません。
人材育成としてすべてを先行投資ではなく、
その時点でできる成果を最大化しています。
しかもカンタンであ
るように見えますが、
毎日レポートを書くということは、
文書の書き方も学べますし、
一番大きいのは各個人の観察眼ができ
るということです。
マーケティング的な視点を学ぶには
定点観察が重要、
ということが言われます。
定
点観察とは、
ある一定の物事をずっと観察し続けて、
状況を追っていくことです。
こうした癖がついていて分析できるように
なると、
その事例をもとに
何事も先を読んだり、
必要な情報、観点は何か、
ということが考えることができるようになりま
す。
グローバル化が進む中、
時代の先を読まないと生きていけない時代で、
個人的には企業的にも世界的な人脈を形
成・増幅しつつ、
観察眼をも身に着けさせるということ、
両者がともに価値の提供をしあうという、
素晴らしい人材育成の仕
組みであり戦略だと思います。