【東洋経済】ニュースが分かる経営学」から記事要約

ちょっと古いですが、東洋経済7/9号から興味のあった3記事を要約してご紹介。

週刊 東洋経済 2011年 7/9号 [雑誌]

衰退の5段階 理論で不振のソニーは何段階

 創業65年のソニーが相次ぐ不祥事に揺れている。そのソニーを名著「ビジョナリー・カンパニー」の著者J.C.コリンズが最新刊で提唱する「衰退の5段階」にあてはめて考えてみる。

 1964年に創業したソニー、79年にはウォークマンの大ヒットでその名を不動のものとするが、この辺りから「成功から生まれる傲慢」の兆しが見え始める。80年代は「規律なき拡大路線」、レコード会社買収などに奔走しブランド力が絶大なものとなった。その後、01年にはAppleiPodが大ヒットしたものの自社の音楽事業とのしがらみで追従できなかったソニー、03年には日産のゴーンを外部役員として迎えるなどして建て直しを図るも、03年ソニーショックが起きてしまう。このとき、ソニーは「営業利益率10%」という無謀とも言える公約を掲げる。これが「リスクと問題の否認」である。その後、平面型ブラウン管テレビが大ヒットするも、皮肉にもそれによって液晶への参入が遅れてしまう。苦境に陥ったソニーは04年からサムスン電子と合併会社を作るなど「一発逆転策の追求」が数多くみられるようになる。08年以降、売却を加速、部品調達の絞込みや業務外注による費用節減を勧めるようになったが、これが「屈服と凡庸な企業への転落か消滅」へと足を踏み入れつつあることを示しているのか、今後の復活の芽とともに注目しておきたい。

日産の個性派SUV ジュークはなぜ売れた

 「コンパクトカーにグッドデザイン、グッドプライス」、日産の「ジューク」が想定を超えてヒットしている。

 ジュークはコンパクトSUV、特徴はそのデザイン。大きな丸型ヘッドランプや大きく張り出したフェンダーなどで存在感を強く主張する。社内調査ではそのデザインが個性的過ぎる、と意見が割れたがふたを開けてみると販売計画を大きく超過した受注を獲得した。メイン市場は欧州、その欧州で需要の高い実用性だけでなく、デザイン性などの価値も求められているはずという読みがあたった結果だ。

 ジュークは市場の空白地帯を狙った。想定する顧客は30代前半の男性、プリファミリー層。プリファミリー層とは未婚か結婚してもまだ子供をもたない層、いわゆる車にプラスアルファを求める顧客層である。顧客タイプ別の分類から見ると、ジュークで想定されるのはイノベーターとアーリーアダプターであり、決してボリュームが大きい領域ではない。そのため、発売前の販促に力を入れてきた。ネット、facebookを積極的に活用、顧客の質問には24時間以内に回答するなど双方向のコミュニケーションを重視。また、高級車に近い手法を活用し、価格面では「この内容でこの価格」という意外感を演出した。

 今後はマスへの浸透を意識し、フォロワー以下のボリュームゾーンも攻略していく。6月にはインドネシアでもジュークの販売を開始、最終的には75の国・地域へ拡大していく。

国内苦戦の資生堂 なぜい新製品を半減

 資生堂が今期は製品投入数を半減して、製品数の絞込みに舵を切る。

 海外は順調な資生堂、しかし国内は低価格化が進み化粧品は低迷5期連続の減収となっている。化粧品は通常売れるのは販売開始時のみ、そのため新製品に依存する少量多品種のビジネスモデルとなる。これが効率性を重視する「選択と集中の欠如」と「営業や研究開発のパワー分散」を引き起こし、結果として顧客ニーズにも上手くことができないという負のスパイラルと陥っている。
 資生堂はテコ入れ策として新製品の絞込みに入る。これにより在庫管理等のコスト低減、そして集中した研究開発も行える。しかし、単にそれだけでは競争力が落ちてしまう。販売の現場では売り方に今まで以上の工夫が必要になるが、この状況を乗り越えたとき、資生堂の強さは本物となる。