受託とサービス開発、考え方の違いと両立性

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受託の話をしよう」という記事がとても面白かったことと、製品販売の先輩とちょっと話したことから受託とサービスについてちょっと思うことを。

受託とサービス開発の考え方

ここはそもそも考え方が大きく違う。外面だけ見るとこんな感じ。

  • 受託側

 顧客の要望に何とか答えるべく、昼夜問わず飛び回り、「無茶だ」と思いながらも着地点をどうにかひねり出すみたいなことをやって体力も精神も削り取られる。

  • サービス開発側

 ターゲットとする顧客を見出し、ニーズの重要性と開発の難易度のバランスを見ながらリリース計画を営業と相談しつつ決めていく。未来的売り上げと利益が根本にあるので、今何かを削りとられる感は少なく、比較的精神的余裕も持てる。

あくまで外面だけ見るとだけど概ねこんな感じではなかろうか。

両者の両立性

 この両者は企業の中の活動としては、ともに売上/利益をあげる目的であることに変わりはないが、「受託の話をしよう」にもあるとおり、「当月の稼ぎ」と「明日の稼ぎ」の両立が難しいために相容れない要素も多い。極論的に言えば、相容れる必要もないと思わなくもないが、難しいのは受託とサービス開発の違いをアタマでは分かっていても行動できない、ということにある。

クリエイティブ性の違い

 受託でも一次受けなら相応の提案を求められるので、ある範囲の中でクリエイティブであるという考えはなくもない。この「ある範囲の中で」が曲者で、この感覚が容易に払拭できないので、両者が食い違う原因になる。加えて、クリエイティブに考えるところの重要性が異なるというところも大きい。例えば「デザイン」、受託だと受注後にデザインを考えるので、ぶっちゃけ機能の方が最重要であって、後回しにされることも多い。でもサービスは違う。そもそもカッコ悪いデザインだと見向きもしてもらえないというか、最初から「本当に良いサービスなのか」というマイナスからのスタートとなるので何とも不利になってしまう。ターゲット選定やコンセプトあたりの重要性も結構観点が異なるので、その辺りを柔軟に対応するのは結構難しいのではないだろうか。実際は、皆普段の生活では消費者なのでアタマでは分かっているはずだが、これがなかなか・・・というのがやはり現状だろう。要は「絶対になければならない、業務がまわらないシステム」と「あったらいいな的なサービス」では力の入れどころが異なるということだ。

メッセージ性

 メッセージという視点で見れば、要は「機能からのメッセージを最大化する受託システム的な視点」と「サービス全体でどこからでもメッセージを発しなければ勝負にならないサービス的な視点」で、両者の違いをお互い上手く理解していないということが問題になっている。

受託の重要性

 ただ、「受託の話をしよう」で書かれている通り、「狭いインターネットから、あらゆる業務がネットに繋がる時代になって行くから可能性はどんどん広がる」というところはそうだろう。ただ、勘違いしてはいけないのは、アプリを作るハードルはどんどん下がっていっているので、必要とされる軸足が安定性とかそういったところを支えるインフラ技術とかにうつりつつある(高度なアプリとか技術者はもちろん必要とされるけど)。受託としてその辺りができる開発部隊は重要視されて価値が上がると思うけど、そうでない部隊はきっとそうはいかないはずだ。トータルで企業の根幹を支える覚悟がないと受託の生き残りは難しいに違いない。

サービス開発は営業とのタッグで飛躍的に伸びる

 一方でサービス開発側は、初期コンセプトやデザインコンセプト、ターゲット、ベネフィット、感情などなど様々な要素をトータルに考えてサービスを企画/具現化していかなければならない。しかも、受託と異なり売上に確証がないので、本気で開発する部隊や企画やサービスに携わる人間はドキドキものだ。売れなければ片身も狭くなるし、次期開発もままならない。サービスとしてはやはり顧客ニーズをどう汲み取るかにかかっているものの、顧客ごとに入り組んだ事情をすべて受け入れるわけにはいかない。受け入れる/受け入れないをどう決めるかは初期コンセプトに戻って考えるのが一番だが、初期コンセプトが曖昧だと、大抵権限がある人の感覚で受け入れ/受け入れないを決めてしまい、最終的に「なんだっけ、これ?」みたいなことになりかねないので注意が必要だ。
 一方で、スピード感という意味では、特に専門のマーケティング部隊を持たないような場合は、機能を追加/削除するような判断は営業が明確なコンセプトから導き出してしまった方が良い。そして、あわゆくばこんな感じでってプロトを作ってしまうくらいの勢いがあると、物事の進み方はおそらく10倍早くなるに違いない。そういう意味では営業が技術力を持って、バグバグなプロトを作ってしまうというカタチはとてもありじゃないかと最近は思っている。逆に裏で品質良く開発する部隊が営業側に乗り出すってのももちろんありだ。どちらにしても、顧客ニーズは想定だけでは吸い上げることは不可能なので、営業と技術の絶妙なコンビネーションが最適なサービスやスピードを生み出すことは間違いない。