コナミの「無料太もも筋肉チェック」の狙い

 「フィットネスクラブの大手、コナミスポーツ&ライフが太ももの筋肉を超音波で測定する装置を全店舗に導入し、中高年向けの体力測定サービスを開始する」という記事があった。フィットネスクラブといえばコナミもそうだがティップネスゴールドジムメガロスなど様々な企業が参入している市場だ。
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いわずと知れた継続モデル

 フィットネスクラブはビジネスモデルとしては言わずと知れた「継続モデル」。継続モデルとは、例えばインターネット等の「月々固定でいくら」みたいなものだ。インフラを整備して、メンテナンスしつつ、客からは毎月安定した収入が望めるモデルである。ちなみにプリンタのインクジェットの購入も継続モデルと似ているがあれば「消耗品モデル」と言われる。図解するとこんな感じになる。(月会費は西葛西店の「エグザス支店会員Lite」会員の月会費とした。)


無料で太ももの筋肉チェックサービス

 そんなコナミが無料で太もものチェックサービスを開始した。この狙いはもちろん会員への誘導にある。無料でサービスを展開し、会員化すれば月々安定した収入が見込めるからだ。なので、先ほどの図に無料サービスを追加する。

9月をめどに有料サービス化

 実はこのサービスは9月以降有料化される。ということはコナミにとっては、会員から9月以降1500円の収入も加算されることになり、9月以降はこんなモデルになるということだ。

最終的には会員増

 もちろんコナミの狙いは継続モデルに引き込むことなので、最終的には無料/有料サービスを呼び水に会員化することが目的なのは言うまでもない。しかし、こうした筋肉チェックサービスが本当に呼び水となるのか、なぜコナミはそこを狙ったのか、それをマーケティング的に分析してみる。

PEST分析とAMTUL

 そもそもなぜにコナミは全店舗に器具を導入してまでこうしたサービスを始めたのか。それはPEST分析の「S(social)]で説明できる。最近の日本で顕著なのは少子高齢化だ。ということは、中高年ももちろん増えることになる。言い方はちょっと悪いがいわゆる「介護予備」群であり、「介護予防」群とも考えられる。少子高齢化ということは、「生涯自分の足で歩きたい」、「ゴルフなどの趣味を楽しみたい」という人たちの割合が増えているわけだ。そしてこれからも増え続ける。コナミはそこを有望な市場を見て、こうしたサービスを呼び水に会員増を狙っているわけだ。
 なぜに「太もも」だけなのか、というところも理由がある。それは、足腰の衰えによる歩行困難は太もも前面の筋肉と相関関係がある、ということが分かっているからである。なので変に「全身」などの表現ではなく、ダイレクトに中高年層をターゲットとした「太ももの筋肉チェック」を謳っているというわけだ。
 さらに、消費者の購買決定プロセスモデルでは「AMTUL」が用いられている。購買決定プロセスでは、AIDMAが有名だが、AMTULは認知(aware)、記憶(memory)、試用(trial)、本格的使用(usage)、ブランド固定(loyalty)の略であり、今回のナムコの施策は「試用(trial)」(無料チェックサービスと体験との組合せ)から「本格的使用(usage)」(会員化)、「ブランド固定(loyalty)」へともっていく狙いがあると見られる。
 「中高年に対し介護予防のために筋力の維持をサポートする」というポジショニングも明確だ。

さらに深読みすると・・・

 さらにちょっと深読みしてみると、もちろんこうした機器にはメーカーがいるわけで、コナミのこの施策が成功すれば、メーカーが家庭用として機能を落とした安価な機器を販売しないとも限らない。そういう意味では、コナミとこうしたメーカーもある意味ビジネスモデルに含まれてくる。なので、最終的にはこんな感じになるのではないだろうか。

最後に

 コナミは、基本的には継続モデルには違いない。そのモデルに顧客を呼び込むためにPEST分析を行いポジショニングを再設定している。日々変わりゆく社会や経済状況に対応すべく、こうした見直しを行うことがマーケティングの基本なのは言うまでもない。競合よりも会員価格は若干高めの設定ではあるが、こうしたポジショニングの再設定などが上手く働いて、落ち込んでいるコナミの健康サービス事業は回復に向かうかもしれない。